はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆1月度

2017-02-27 23:37:08 | はがき随筆
 はがき随筆の1月度月間賞は次の皆さんでした。

 【優秀作】17日「大変身」別府柳子=鹿児島市下荒田
 【佳作】12日「こたつ寝もよし」本山るみ子=鹿児島市上荒田町
▽28日「気分のいい温泉」中馬和美=姶良市加治木町


 「大変身」は、生来の消極的な性格に加えて、難病にまでかかり、閉じこもりがちの自分を、同病の人たちとの支え合いで克服し、人前での手話コーラスが楽しいという内容です。パラリンピックにも励まされますが、こういう自分へのご褒美の文章は、読んでいて元気づけられます。 
 「こたつ寝もよし」は、冷え症に苦しむ、コタツ愛用者の近況報告です。コタツでぬくぬくと居眠りをすることに、罪悪感を感じるというところに、生活の中でのかすかな心理の動揺がとらえられています。一転、居眠りもこれでよしと自己納得されているのも、ほほえましく感じました。
 「気分のいい温泉」は、銭湯で忘れ物の財布を届けた後、温泉につかって、自分や妻の財布が戻ってきたときの、人の善意のありがたさを思い出した。落とし主の安堵の様子を聞いて、自分も心地よく温泉もいい湯だったという、気持ちの温まる文章です。
 この他に3編を紹介します。
 東郷久子さんの「近ごろ」は、ある役目を引き受けたので、来年の4月まで生かしておいてくださいと神さまにお願いした。それに孫のこともあるので、再来年の4月までもお願いした。それにベートーベンの第九も歌いたいから、という欲張った内容の文章です。これがおそらく長生きの秘訣でしょう。
 馬渡浩子さんの「古夫婦は今」は、夫婦の仲を数字の8のような関係という表現がいいですね。ところがその二つの丸が今や離れてしまった。それは自分の態度が悪いせいだと分かっているので、謝ったら「お互いさま」という温かい言葉が帰って来た。どうやら丸は離れていなかったようです。
 的場豊子さんの「〝やる気〟減退」は、元気が取り柄の自分には、高齢者75歳の見直しに納得した。とはいえ、やる気がやはり減退してきているのを認めざるをえない。家庭菜園も掃除もスケジュールも、怠けがちで満足感がない。やる気さまの再来を願うしかない。
  鹿児島大学名誉教授 石田忠彦

川霧りの観測

2017-02-27 22:42:16 | はがき随筆
 先日の川内川の川霧の記事に懐かしさがこみ上げてきた。
 若い頃、さつま町の学校に勤めていた。生徒たちと川霧発生の観測に挑んだ。11月の末ごろだったろうか、快晴、無風、月夜、絶好の観測日和。山の斜面で10カ所ほど、気温、風向などを徹夜で測定した。放射冷却による冷気は勢いよく斜面を滑り盆地にたまっていく。気温の逆転、霧の発生である。
 夜明け前から霧が盆地にたまり始め、盛り上がってくる。そして朝日に霧の海がオレンジ色に染まると皆黙って見入っていた。記録計のインクは霧であふれていた。亀田さん、謝謝。
  鹿児島市 野崎正昭 2017/2/23 毎日新聞鹿児島版掲載