2016年の鹿児島版「はがき随筆」の年間賞に、出水市中央町の宮路量温さん(70)の作品「回想」(1月20日掲載)が選ばれました。2013年の初投稿から4年足らずで投稿は46回、掲載は38作品に上る。宮路さんは「今や作品づくりが生活の一部になっている。これからも元気な間は月1回の投稿を続けたい」と話している。【西貴晴】
年間賞に宮路さん
感謝の気持ち作品に込め
宮路さんは出水市出身。長らく地元の土地改良区に勤めた。ある日、原稿用紙を手にした2歳上の姉から「ぼけ防止になるかも」と勧められたのが投稿のきっかけ。「孫自慢」と題した初投稿が紙面を飾った。
以降、紙面に掲載されるはがき随筆はすべてスクラップ。「ああ、こんな見方もあるんだ」と自分以外の作品を〝教科書〟代わりに作品づくりを学んだ。選者の石田忠彦さんの月間賞選評も熟読する。投稿前には妻(64)にも意見を求め、分かりやすい表現に直したり、漢字を平仮名に替えたり。「そういう意味では妻も作品づくりに参加しています」
受賞作品は、約1年半前に99歳で亡くなった父の四十九日を終え、曾木の滝温泉(伊佐市)に妻と出かけたときの出来事を書いた。父は認知症の母の介護を一人で続け、母を先に送って11年後に逝った。母へ、そして父への感謝の気持ちを作品に込めた。
最初にテーマやタイトルを考えるのが宮路さんのスタイル。いったん原稿用紙に作品を書いた後、実際の投稿まで1.2週間かけて推敲する。孫を題材にした作品も多く、宮路さんは「自分の作品が活字になって残る。私が死んだ後、孫に『いい作品を残してくれてありがとう』と言ってもらえるよう書き続けたい」と語る。
◇ ◇
鹿児島版を含む九州・山口各地区の年間賞13点の中から選ぶ毎日はがき随筆大賞1点などの発表・表彰式は5月27日午前11時~午後2時、北九州市小倉北区馬借、ホテルクラウンパレス小倉で開かれる。問い合わせは毎日新聞西部本社販売開発部「はがき随筆大賞事務局」(096・541・8271)。
無理なくまとまる文章
選評
例年のとおり月間賞の中から、宮路量温さんの「回想」、塩田幸弘さん「ミルク」、山下秀雄さん「アジサイ」、口町円子さん「変わりました」の4編をまず選び、その中から年間賞を決めました。
「ミルク」は、地震の揺れ、娘や孫の心配、ミルク不足、他の赤ちゃんへの思いやりなど温かい文章です。「アジサイ」はアジサイの美しさに、かつての若い女性との心の交流が淡く思い出される内容です。「変わりました」は、料理鋏を毛嫌いしていたが、いつのまにやら使うようになったという内容で、軽妙な味のある文章です。ただ、いずれもやや一本調子だという印象をもちました。
「回想」は、父の四十九日に、温泉で父のことを思い出していたら、湯煙の中に父に似た骨格の人を見かけたという文章です。少ない字数の中に、挑戦から引き揚げた両親の苦労、母の老化、父の母への献身、自分の親孝行への悔いなどの多くの内容が、無理なくまとめられているところを評価しました。
鹿児島大学名誉教授 石田忠彦
年間賞に宮路さん
感謝の気持ち作品に込め
宮路さんは出水市出身。長らく地元の土地改良区に勤めた。ある日、原稿用紙を手にした2歳上の姉から「ぼけ防止になるかも」と勧められたのが投稿のきっかけ。「孫自慢」と題した初投稿が紙面を飾った。
以降、紙面に掲載されるはがき随筆はすべてスクラップ。「ああ、こんな見方もあるんだ」と自分以外の作品を〝教科書〟代わりに作品づくりを学んだ。選者の石田忠彦さんの月間賞選評も熟読する。投稿前には妻(64)にも意見を求め、分かりやすい表現に直したり、漢字を平仮名に替えたり。「そういう意味では妻も作品づくりに参加しています」
受賞作品は、約1年半前に99歳で亡くなった父の四十九日を終え、曾木の滝温泉(伊佐市)に妻と出かけたときの出来事を書いた。父は認知症の母の介護を一人で続け、母を先に送って11年後に逝った。母へ、そして父への感謝の気持ちを作品に込めた。
最初にテーマやタイトルを考えるのが宮路さんのスタイル。いったん原稿用紙に作品を書いた後、実際の投稿まで1.2週間かけて推敲する。孫を題材にした作品も多く、宮路さんは「自分の作品が活字になって残る。私が死んだ後、孫に『いい作品を残してくれてありがとう』と言ってもらえるよう書き続けたい」と語る。
◇ ◇
鹿児島版を含む九州・山口各地区の年間賞13点の中から選ぶ毎日はがき随筆大賞1点などの発表・表彰式は5月27日午前11時~午後2時、北九州市小倉北区馬借、ホテルクラウンパレス小倉で開かれる。問い合わせは毎日新聞西部本社販売開発部「はがき随筆大賞事務局」(096・541・8271)。
無理なくまとまる文章
選評
例年のとおり月間賞の中から、宮路量温さんの「回想」、塩田幸弘さん「ミルク」、山下秀雄さん「アジサイ」、口町円子さん「変わりました」の4編をまず選び、その中から年間賞を決めました。
「ミルク」は、地震の揺れ、娘や孫の心配、ミルク不足、他の赤ちゃんへの思いやりなど温かい文章です。「アジサイ」はアジサイの美しさに、かつての若い女性との心の交流が淡く思い出される内容です。「変わりました」は、料理鋏を毛嫌いしていたが、いつのまにやら使うようになったという内容で、軽妙な味のある文章です。ただ、いずれもやや一本調子だという印象をもちました。
「回想」は、父の四十九日に、温泉で父のことを思い出していたら、湯煙の中に父に似た骨格の人を見かけたという文章です。少ない字数の中に、挑戦から引き揚げた両親の苦労、母の老化、父の母への献身、自分の親孝行への悔いなどの多くの内容が、無理なくまとめられているところを評価しました。
鹿児島大学名誉教授 石田忠彦