はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

モモ

2017-04-28 16:47:21 | はがき随筆


 東京暮らしの長かった姪が、ホーランドロップの耳たれウサギを連れて帰って来た。
 真夏の引っ越しとなり、鹿児島の暑さは高齢のモモへの負担が大きいだろうと、春から我が家で預かることになった。
 ペットのウサギなんて! と思っていたバアバに、モモは、なでて、なでて、抱っこしてと、すり寄ってくる。嬉しいときは横っ跳びで喜びを表現する愛らしさ……。
 思いがけなく楽しい里親体験をさせてもらった。油断するとケーブルを噛み切ったり、いたずらもいっぱいしたが……。
 モモはもう居ない。
  鹿屋市 西尾フミ子 2017/4/28 毎日新聞鹿児島版掲載

親バカ歴史

2017-04-28 16:40:51 | はがき随筆
 指宿から鹿児島市吉野に転居した娘家族に温度計を贈った。室内外の気温を同時に知ることができる。「吉野の冬は寒いと思う。1歳半のユキ君にカゼを引かせないようにね」
 その娘が4歳の3月、内之浦から入来町に転居した。11月の初霜に驚いた私は石油ストーブを入手して使い始めた。と間もなく娘とその妹2人ともカゼを引いた。室内の乾燥と内外の温度差によると判断し、火鉢に変えた。毎日の天気と最高最低温度などを記録していると、おのずと見えてくるものがある。知恵が生まれてくる。「気をつけて見ていてごらん」
  出水市 中島征士 2017/4/27 毎日新聞鹿児島版掲載

もうだいじょうぶ

2017-04-28 16:34:37 | はがき随筆
 この3月に保育園を卒園した男の子の孫が一人で我が家に泊ることになった。泊れそうで泊れなかった前回から久しぶりのチャレンジだった。
 同い年のいとこも泊るので喜々として床についたが、眠れない孫は0時を過ぎた頃「帰りたいよ」と泣き出した。私は途方に暮れたが、孫を抱きかかえて待つしかすべがなかった。やがて泣きつかれた孫は小さな寝息を立てながら眠り、時折私にしがみつきながら朝を迎えた。
 2日目、孫はまた一人で泊ることを決めて親に電話した後「もうだいじょうぶ」と大声を出した。頼もしい姿だった。
  姶良市 中馬和美 2017/4/25 毎日新聞鹿児島版掲載

あの橋で…

2017-04-28 16:19:23 | はがき随筆


 「あの、ウェストミンスター橋て゛テロ?」。信じられなかった。ビッグベン、国会議事堂の目の前。テムズ川かにかかる大きく、長い橋。バッキンガム宮殿、ロンドンアイなども歩いて行ける距離にある。ロンドンの中心部。
 娘と英国2人旅をした際、ウエストミンスター橋のたもとにあるホテルに宿泊。コッツウォルズ、スペインへ足を延ばした。それ以外はこのホテルを拠点に行動した。ウエストミンスター橋を何往復したことか。印象深い橋だ。今、欧州は、いつ、どこでテロが起きてもおかしくない場所になってしまった。
  垂水市 竹之内政子 2017/4/24 毎日新聞鹿児島版掲載

花見

2017-04-28 16:08:20 | はがき随筆
 世は浮世につれても花見は不変である。さて甲突川での花見は雨による会場変更でカラオケになった。川岸の桜を見るために周辺に足を運んだ。開花宣言は出されたが、まだ三分咲きの状態であった。
 それにしても桜を見ていると、儚い運命を感じるのは自分だけであろうか。特攻隊員として敵艦に突入した若者は、いかなる夢を持っていたのだろう。儚の字は人が夢を持つイメージである。
 桜の真実は60年前、校門の桜の木の前で母親と写した古ぼけた写真だけである。
  鹿児島市 下内幸一 2017/4/26 毎日新聞鹿児島版掲載