はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ペンクラブグランプリ

2017-04-23 22:07:11 | 受賞作品


ペンクラブ鹿児島の総会は16日、鹿児島市内で開催され、ペンクラブグランプリの表彰式がありました。
2016年のグランプリに選ばれたのは、本山るみ子さんの「2人でお茶を」です。
二度目のグランプリ受賞となった作品は、歳月を経た、大人の恋を描いた味のある作品です。

流石

2017-04-23 18:38:46 | はがき随筆
 ある日、左の脇腹に鈍い痛みを感じた。生きていればこんなこともあるかと気にしないようにしていたが、だんだん痛みが中央寄りに移動して恥骨のあたりまで来たとき、居ても立っても激痛、あ、尿道結石、病院と思ったが、ふとテレビで見た残尿を流す方法を思い出し、試してみた。数回繰り返したときポトリと音がした。見ると1㌢弱の細いハート形の物体があった。
 流石と思ってしばらく見て流した。ヒリヒリ感が尿道にあったが、痛みはとれていた。石はとっておけばよかったのにと人に言われたが、後の祭り。
  南九州市 林修一 2017/4/22 毎日新聞鹿児島版掲載

平安の姫君

2017-04-23 18:32:38 | はがき随筆
 今、私は鹿児島市のY病院にいる。大けがで搬送されたのだ。私の平安の姫君的生活が始まった。今までなにも考えないでちゃちゃっとやれていたことが、何一つできなくなった。半径1㍍だけが、私が一人で動ける範囲。冷蔵庫のお茶も取れない。ベッドから落ちたペンも取れない。誰かの介助なくば、生きることができない。
 だからあえて、今ばかりは思おう。私「平安の姫君」なのだ、と。彼女たちは、館の奥の帳のなかで、ほぼ一日横たわって暮らしていた。生きるための全ての業を、人任せにして。私はいま、平安の姫君。
  鹿児島市 奥村美枝 2017/4/23 毎日新聞鹿児島版掲載

「山」を登る

2017-04-23 18:25:50 | はがき随筆
 初めて合田雄一郎を見たのは、映画「マークスの山」だった。白いスニーカーを風呂場で無心に洗う刑事である。
 奄美に出張した11年前、宿で機内で文庫を貪るように呼んだ。巻末に「文庫化するに当たり、かなり手を入れた」とあり、初版本が欲しくなった。程なく古本市で見つけて即購入した。
 長く手を付けなかったが、昨年末から読み始めた。細かい文字がびっしり2段組みで並び、結構てごわい。峻険な「山」登りに2ヶ月を要した。高村薫女史の筆致に圧倒されっぱなし。古びた文庫本(上下)にもう一度戻って読み比べてみよう。
  鹿児島市 本山るみ子 2017/4/21 毎日新聞鹿児島版掲載

ありがとう

2017-04-23 18:18:46 | はがき随筆
 夕飯を孫娘と一緒に囲んでいると、早くお茶を飲みなさいと、口では表現しないが目で大人じみた合図をくれた。夕飯のメニューはイチゴサラダ。焼き魚、おみそ汁、デザートにリンゴケーキ。後でキッチンに自分用の食器を運んだ。
 湯上りの老母体の腰や膝に湿布を貼ると、そばに座り手伝うと言う。初めは腰にべったりとひっついた。不思議そうな顔して今度は手ぎわよく貼れた。もみじのようなかれんな、いとおしい手のひらと、しわくちゃの手のひらは熱い握手を交わした。優しい孫よ、ありがとう。つぶらな瞳が愛らしい。
  姶良市 堀美代子 2017/4/20 毎日新聞鹿児島版掲載

おや? まあ?

2017-04-23 18:11:40 | はがき随筆
 大相撲春場所は、19年ぶりに日本人横綱、稀勢の里が誕生し盛り上がっている。
 風説に便乗しテレビ観戦中に、妻が「あの人、義父さんに似ている」と声をあげた。西方花道沿いの前方に、一回忌を過ぎたはずの父? が映っている。
 はげ具合、顔、輪郭の仕草まで似ている。いずこの人か。世の中に3人は似た人がいるというが、画面の人はまるで月が川面に映るかのようにそっくりさんだ。早速姉弟、娘に「父が相撲観戦してる」とメールを送る。「似ている」との返信に15日間は父と会える気分だが、胸奥に母も見たい思いが湧く。  
  出水市 宮路量温 2017/4/19 毎日新聞鹿児島版掲載

川内川の話

2017-04-23 18:03:48 | はがき随筆
 3月13日、「川内川と人々」という題で話をした。場所は「はがき随筆」の総会や研修会がよくある、キャンセビルの会議室。聴いてくださる方は、約40名だった。
 私は、何に焦点を絞ればよいのか不安だった。川の流域で取れる米の量や、文化と歴史。カッパと間違えられたというアカショウビンやトラツグミの声などもテープに録音して聴いてもらった。
 会の後の質疑では、河口付近の原発の温排水などが多く話題になった。
 失敗の巻だったかもしれない。やれやれ、疲れた。
  出水市 小村忍 20174/18 毎日新聞鹿児島版掲載

健さん追悼展

2017-04-23 17:53:59 | はがき随筆


 北九州市立美術館分館で催された高倉健追悼特別展へ。入った途端、壁、天井の6面のスペースに「網走番外地」「昭和残俠伝」の予告編が渦巻くように映し出され,ドスを片手の健さんが迫ってきた。展覧会はデビュー作から遺作となった「あなたへ」まで、205本の名場面を会場に投影するのが目玉。
 特別展は他都市でも開催されるが、北九州展では地元とあって、オリジナル書籍「そこに、健さんがいた。」が発行された。この書籍に私の拙文「『俺は後輩』心の支え」も載った。健さんの面影を追いかけ、記念書籍も購入できた追悼展だった。
  鹿児島市 高橋誠 2017/4/17 毎日新聞鹿児島版掲載

カタイもんそ

2017-04-23 17:37:27 | はがき随筆
 ふるさと暮らしを始めて気づいたことは、日常会話からかごっま弁が失われつつある。ある紙面に「方言の継承へ」、生の方言を耳にする機会が減少したことが、方言離れの主な要因であるとの分析の記事。小学生の頃「方言は使うな」と教えられていたが、方言丸出しの日常だった。今時々、公民館講座などで年配の方に「ツダ チタ イタカ チンタカ アマメ ドベ トモレ サンニヨ ハマ……」、こん意味は何? と問うと、ジャッタ!ジャッタ!と方言が飛び交う。かごっま弁は薩摩が編みだした素朴で独特のなまりが面白い。みんなでカタイもんそ。
  さつま町 小向井一成 2017/4/16 毎日新聞鹿児島版掲載

ワサビの花 春味わう

2017-04-23 16:45:32 | 岩国エッセイサロンより



2017年4月23日 (日)
   岩国市   会 員   角 智之

 ワサビは、古くから根茎をおろし金ですりおろし、刺し身の香辛料として広く使用されている。
 年末から早春にかけて収穫される茎や葉は、しょうゆや酒かす漬けなどに利用されている。
 春が旬の花も、しょうゆ漬けがうまい。花茎は肥えて歯応えがよく、上品な辛みは食欲をそそり、酒のさかなにも重宝される。
 大まかな作り方は、スーパーや園芸店などでワサビの花を調達し、しょうゆをベースに酒やみりん、砂糖の他好みの調味料をブレンドした漬け汁を用意しておく。
 よく水洗いした花をざるに入れ、70度から80度の湯にくぐらせ、ふたをして5回程度強く振る。
 この作業を2、3回くり返した後、冷水に浸し、よく絞って広口瓶に入れ、漬け汁を注いで密閉する。2日程度で、おいしくいただくことができる。
 根茎よりも安く入手できるワサビの花のしょうゆ漬けを、ぜひお試しいただきたい。

    (2017.04.23 中国新聞「広場」掲載)

母の日 ローズ プリザーブド…