はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

いのちを頂く

2018-03-30 10:51:37 | はがき随筆
 先日中学2年生の書いた「いただきますに感謝」という作文を読んだ。彼は、学校の講演会で牛を解体する仕事の方から話を聞いた。牛が死を察してか涙を流すことや、生きるためには多くのいのちをいただいて生きていることなどを学び感銘を受け「いのちをいただくことに感謝し、精いっぱい生きていきます」と結んでいた。
 世界中には食糧が不足し、命の危険に直面している人々がたくさんいる。それを知っていながら平気で食べ残している。私どもは毎日の食事について深く考えたことがあるのだろうか。立ち止まって考えてみよう。
  志布志市 一木法明  2018/3/30  毎日新聞鹿児島版掲載

お姉ちゃん

2018-03-30 10:31:56 | はがき随筆


 母が施設に入所して6年目の春。昨年の秋までは笑顔で名前を呼び歓迎してくれた。今「お姉ちゃん」としか言えない。娘だと認識できているのか疑問だ。記憶を手繰り寄せられずに困惑顔の母。誰だか分からないのか? 
 間違いを訂正すると、ばつが悪そうだ。思い出せなくて残念なのは当の本人なのだから、これ以上、反応を探るのはやめよう。面会の度に試され可哀そうになった。識別できなくてもよしとしよう。現実を受け入れると少しは気が楽になった。あと少し頑張ってほしい。母の好きな沈丁花、優しい香りが心地よく辺りを包んでくれた。
  鹿屋市  中鶴裕子  2018/3/29  毎日新聞鹿児島版掲載