2019年9月16日 (月)
岩国市 会 員 吉岡 賢一
近くのカラオケ同好会のリーダーから「カラオケに行きましょう」とお誘いがあった。まんざら嫌いな道でもないので一応お受けして約束の場所に出向いた。男性3人、女性2人が待っていて「得意な歌を3、4曲ぜひお願いします」と乗せられ、つい破れ声を張り上げてしまった。
「実は私たちは同好会のメンバーで介護施設などを訪問して歌を聞いてもらっています。もちろんボランティアで」という意外な方向に話が進み「あなたにも、ぜひご一緒してもらって、この曲とこの曲を歌ってほしい」と曲目を指定されたのだ。
「下手の横好きで自ら楽しむために歌ってきただけです。人様に間いていただく声でも歌でもありません」と一旦はお断りした。だが待てよ。「施設のお年寄りに喜んでいただくボランティアを一緒に」と誘われたのだ。
地区の社会福祉協議会を通して、あれこれボランティア活動に精を出している今を考えるとむげにお断りするのもねー。しかもよく考えてみると100歳を生きた母も晩年の2年間は施設でお世話になった。そのとき、いろいろなグループが施設を訪れ、お年寄りが笑顔を浮かべていたのを思い出した。
演歌が大好き、芝居も映画も好きだった母の前で、本気で歌って聞かせたことがなかった私に、遅ればせながら一つの親孝行の場を与えてもらったような気がして、お断りを撤回した。
となると、歌に合わせたステージ衣装も吟味したくなる。これから胸躍る秋を迎えられそうである。
(2019.09.16 毎日新聞「男の気持ち」掲載)