はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

読書の世界

2019-09-16 15:48:04 | はがき随筆

子供の頃、児童文学『サムライの子』を読んで、しばらくその世界から離れられないでいた記憶がある。読書の世界に入るキッカケとなった一冊である。

 海援隊の武田鉄矢さんが『竜馬がゆく』を読むと「坂本龍馬が我が家の中で歩き出すのですよ」と言われたことがあるが同感である。30代から司馬文学歴史小説に熱中したが登場人物たちと友人になれたように感じるから不思議だ。

 現実の世界に生きているのに、もう一つの世界にも生きているような気がする。読書はそんな不思議な世界であり、それが一番の魅力である。

 熊本県嘉島町 宮本登(68) 2019/9/12毎日新聞鹿児島版掲載


読書の世界

2019-09-16 15:48:04 | はがき随筆

子供の頃、児童文学『サムライの子』を読んで、しばらくその世界から離れられないでいた記憶がある。読書の世界に入るキッカケとなった一冊である。

 海援隊の武田鉄矢さんが『竜馬がゆく』を読むと「坂本龍馬が我が家の中で歩き出すのですよ」と言われたことがあるが同感である。30代から司馬文学歴史小説に熱中したが登場人物たちと友人になれたように感じるから不思議だ。

 現実の世界に生きているのに、もう一つの世界にも生きているような気がする。読書はそんな不思議な世界であり、それが一番の魅力である。

 熊本県嘉島町 宮本登(68) 2019/9/12毎日新聞鹿児島版掲載


眠りから覚めて

2019-09-16 15:37:09 | はがき随筆

 読み聞かせで満足感を共有するには絵本選びは大切なプロセス。たくさんの本の中からこの一冊に決めるまでには迷いも伴う。読み聞かせのボランティアも6年目。一週間ごとの本選びはあっという間に巡って来る。

 そんな中、新聞で松岡享子さん紹介ょうかいの紙面からワンダ・ガアグの「100まんびきのねこ」が目にとまる。さっそく押し入れの山積みの本の底から見つけたそれは、何十年も前に子供たちに何度も読んだものだ。その証としてのしみが時のたったのを実感させる。長い眠りから覚めたこの絵本に再び息を吹きこんであけよう。

 宮崎県都城市 蔀なおこ(57) 2019/9/11 毎日新聞鹿児島版掲載


懐かしい校歌

2019-09-16 15:00:20 | はがき随筆

 この夏、57年目の中学校の同級会をもった。恩師は80代、我らが古希を迎える年齢である。長い年月はそれぞれの歴史をうかがわせる。

 特に南阿蘇は3年前の熊本地震で人生の歯車を大きく変えた。卒業生は160名であったが、今回の参加者は35名。久しぶりの再会は笑顔と懐かしさでいっぱいであった。

 最近、南阿蘇も大きく変わり、我らが卒業した中学校名も変わり寂しい限りであった。しかし、みんなで歌った長陽中学校の校歌は年月の流れを忘れ、素晴らしいハーモニーの合唱であった。

 熊本県大津町 小堀徳廣(71) 2019/9/10 毎日新聞鹿児島版掲載


定食屋にて

2019-09-16 14:49:31 | はがき随筆

 サークルの帰り道、夕立を避けて飛び込んだ食堂。店内には8人くらいの常連客がいて和気あいあい。私は独りカウンターに座って日替わり定食を頼んだ。目の前に大きな丼がある。山盛りのタケノコのつくだ煮。なかなかいいサービス。背後からは談笑。とてもいいかんじ。「今度もまた来よう」とパクパクつつきながら待った。「お待ちどうさま」とお盆を抱えたおばちゃんが目を丸くした。「これ食べた?」「はい」「たまたま置いたのよ、ここに」。キッとなって、サッと戸棚へ片付けた。静まり返る店内。料理の味を今まったく思い出せない。

 鹿児島県出水市 山下秀雄(50) 2019/9/8 毎日新聞鹿児島版掲載


憧れたおっぱい

2019-09-16 14:42:23 | はがき随筆

 何歳だったか、私と二つずつ年の離れた2人の妹と「母ちゃん、おっぱいが大きくなりたい」と言った。すかさず母は「隣のおばちゃんみたいになりたいか」と聞いた。一瞬、沈黙。3人は「嫌、嫌だあ」と叫んだ。

 昭和20年代、女の人の中には、上半身裸、下は腰巻だけですごす人がいた。隣のおばちゃんもその一人で、大きなおっぱいは腹まで垂れていた。

 子を産むと大きくなると聞いたが、太った体には胸のふくらみは全く目立たなかった。

 ふっくらと大きなおっぱい。70歳過ぎた今でも、時々ふっと憧れめいた気持ちになる。

 宮崎県高鍋町 井出口あけみ(70) 2019/9/7 毎日新聞鹿児島版掲載


若いはがき随筆

2019-09-16 14:35:47 | はがき随筆

 18歳の荒巻さんの月間賞(6月度)受賞は、はがき随筆・みんなの広場で若い人の投稿を楽しみにしている私にとって、とてもうれしい出来事であった。だから若い人がしっかり社会や人生を見つめて投稿している姿に感心し心から応援している。

 荒巻さんの受賞は、若い人に「私も書いてみようか」という大きな後押しになったと思う。

 みんなの広場に、老若男女いろんな人々の投稿が見られるように、はがき随筆の投稿が更に広がり、にぎわうといいなあ。

 熊本県八代市 今福和歌子(69) 2019/9/6 毎日新聞鹿児島版掲載


難問

2019-09-16 14:28:47 | はがき随筆

 認知症が進行する母が難問を突きつける。自宅介護のつらさの中に楽しさを見つけた矢先に、飯を食べないという超難問を突き付けられた。

 1食を3度に分けて食べさせる。一日の摂食量が極端に減った。往診で点滴しても、ケアマネジャーの知識を借りても、打開策が見付からない。

 母は見る見る痩せていった。20日の朝もオムツを替えたときは、母の体は温かかった。その2時間後に母を逝かせてしまった。

 難問とはいえ答えられない、バカな息子のために。

鹿児島県 出水市 道田道範(70) 2019/9/5 毎日新聞鹿児島版掲載

 


進歩

2019-09-16 14:23:09 | はがき随筆

 一人なりに進歩しなければと思いながら9年の歳月が流れた。

 妻が病に倒れ、完全介護だったが有る思いから少し強引に付き添った。

 そして妻は病と去った。3年くらいは無法地帯で殺伐とした心境で生きる一人の召使を幻想した毎日でした。

 「あなたなら出来るよ。1人で」と安心した様な妻のメモを見たものの、心と生活の穴から抜けきれなかった。恥ずかしい話だが、進歩しなければとあのころから挑戦することを覚え、多岐に趣味と生活風情を変え生きている。

 宮崎県延岡市 前田隆男(82) 2019/9/5 毎日新聞鹿児島版掲載


花オクラ

2019-09-16 14:16:46 | はがき随筆

 以前食べたことのある花オクラを、今年の夏はぜひ植えようと弟にお願いした。大きなプランター。40㌢ほどに成長したのをもらって来た。楽しみ、楽しみ。水をやり毎日見守った。

 さあ、それからがうれしい! の連続。大きな黄色のハイビスカス似の花びら。蝶々になった気分で食べている。オクラと同じ食感。ぬるぬるして体に良さそう。一日花で夕方にはしぼむから新鮮な花を食べる。なんとも幸せ。

 初めて買った鉢植えのハイビスカスの赤とオクラの黄色。早起きのお楽しみとなった。今朝も頭の黒い蝶がくるぞ。

 熊本県八代市 鍬本恵子(73) 2019/9/5 毎日新聞鹿児島版掲載


体重異変

2019-09-16 14:08:52 | はがき随筆

 5月に健康診断をを受けたら体重が思ったより軽かった。3か月過ぎた頃、「コーラスの舞台衣装が着られるか試着してみて」の声に、まず体重を測ってみた。何と3カ月で3㌔増。顔のしわはなくなったものの腕のしわしわは相変わらずなので、太ったと気づかなかった。連日クーラーの部屋で甘党の口をも動かしているので「さもありなん」と納得。少しは反省して数日後再度体重計に。なんと更に5㌔増。これにはびっくり。変だぞと隣家の体重計で測ったら、いつもの私の体重が表示されて、ヤレヤレ。真夏の騒動はこれで一件落着となった。

 鹿児島県霧島市 口町円子(79) 2019/9/5 毎日新聞鹿児島版掲載


グッドタイミング

2019-09-16 14:01:47 | はがき随筆

 理想的な阿吽ではなく、出会い頭のタイミングも時にいい。

 朝から本降りのなか、通勤のバス停に向かっていたら傘をさして両手にゴミ袋抱えた高齢の女性が見えた。近づいて「一つ持ちましょう」と大きい方を一方的に預かった。女性は「ああびっくりしたあ」とけげんな表情で私の顔を見つめる。

 善は急げと言っても知らない同士の出合い頭みたいなタイミングだから当然の反応である。預かったゴミ袋を所定の場所に運んで停留場に急いだ。

 しばらくして「ありがとう」という満を持した様な大きな声が届きほっと安心した。

 宮崎市 杉田茂延(67) 2019/9/5 毎日新聞鹿児島版掲載


お手玉

2019-09-16 13:42:55 | はがき随筆

 熊本ペンクラブの集いで会員の方が箱いっぱいに手作りのお手玉を持参された。白地に水玉模様でかわいらしい。私は3個いただいて帰った。

 子供の頃できていたので帰るなり手のひらに取り、1個を上にあげたが、手のひらにかえってこない。めまいがしそうだ。

 分かった。動体視力の衰え、腹筋、背筋はじめ各能力の衰えゆえに体幹も衰えているのだと。

 今はストレッチに励んでいる。おかげさまで3個を操れるようになり喜んでいる。

 お手玉は老化防止の最たるものだと知らされた。お手玉をくださったY様に感謝!

 熊本市東区 川嶋孝子(80) 2019/9/5 毎日新聞鹿児島版掲載


玉虫に会う

2019-09-16 13:34:57 | はがき随筆

 

 早朝のウオーキングを始めて1週間、道端に光るものを友が見つけた。あざやかな羽、赤と緑の縦じま模様の玉虫だった。

 手のひらに乗せてもじっとしている。家までそのまま帰った。大きなオクラの葉の上にそっと置きカメラに収めた。10分もたったろうか、気がつくといなかった。飛ぶ元気があったとホッとした。

 5月の連休の終わり、家から10㌔ほどの牧場で五つ葉のクローバーと出会った。百万分の一の確率、何かいいことがあるかもと期待した。縁起のいい玉虫に会えたのもそのひとつか、と思うことだった。

 鹿児島県薩摩川内市 馬場園征子(78) 2019/9/5 毎日新聞鹿児島版掲載


俺たちの人生

2019-09-16 10:02:03 | はがき随筆

 仲間4人の例会で「令和11年11月に同窓会しよう」と一人が言い始めた。「俺たち90だよ。誰が幹事やるの?」と呆気に取られて唖然。平成11年の11月、11回卒業生で、イタリア旅行したのが事の発端のようだ。イチイチの語呂合わせは結構だが、これから10年も先の話だ。元気だなあ彼は。今や「人生百年時代」長寿者も多くなるので賛成したいが、健康寿命はどうなるのだろう。

 飲むほどに酔うほどに、馬鹿を言いあう愉快な仲間。ちっとやそっとの不具合なんて柄じゃないなあ。取りあえず彼の提案は、次回までお預けに。

 宮崎市 原田靖(79) 2019/9/4 毎日新聞鹿児島版掲載