その人は、毎朝庭先に立っていらっしゃいます。黙ったまま、車が見えなくなるまで見送られているのです。
我が子の後ろ姿を。
私がそれに気付いたのはある朝、新聞を取りにポストへ行った時でした。気付ば雨の日も早朝から毎朝、仕事に行く我が子を見送られているのです。その後ろ姿は凛として美しく優しさと慈愛に満ちているのです。
親の後ろ姿を見て子は育つといいます。自分と照らし合わすと恥ずかしい限りです。言葉を超えた大きさと深さをこんな近くで教えられている。その在り難さに感謝するばかりです。
熊本県宇城市 野沢美和(54) 2019/9/3 毎日新聞鹿児島版掲載