はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ミニ旅

2020-05-06 11:12:49 | はがき随筆
 新型コロナウイルス禍で外出自粛が叫ばれ、ストレスはたまるばかり。そんなある日、熊本県央の山都町で熊延鉄道写真展が開かれているのを知る。電話で尋ねると会場閉鎖はしていないとのこと。勇んで車を走らせる。
 半世紀以上前に姿を消したローカル私鉄の写真に懐かしい知人の姿も見える。この町まで鉄道は来なかったはずなのに、との疑問を抱いていたのだが、「熊本と延岡を結ぼうとの狙いがあった鉄道。懐かしむ見学者が多いですよ」との係の方の説明に納得。国の要請を無視した形になったが、いい気分転換ができたミニ旅。
 熊本市東区 中村弘之(83) 2020/5/6 毎日新聞鹿児島版掲載

今年の春は

2020-05-06 11:02:56 | はがき随筆
 我が家の庭にも暖冬の波が押し寄せて河津桜が2週間も早く満開となり、3月に入ると若葉がおおい春の息吹を感じる。
 早い春を感じとったツバメは、2月末には巣に戻ってきた。暖冬を謳歌するものがあれば、対応に苦慮するものもある。寒さが苦手なぼくにとって春は早いほどいい。桜の便りが伝えられると浮き浮きしてくる。今年はどこの桜で春を実感しようかと想像するからである。ところが新型コロナウイルスが居座り猛威を振るう早春なのだ。人込みははばかられる。カミさんと渋茶でも飲みながら庭を眺めるしかないのかしら。寂しいな。
鹿児島県志布志市 若宮庸成(80) 2020/5/5 毎日新聞鹿児島版掲載

桜の季節に

2020-05-06 10:46:41 | はがき随筆
 家の前の満開の桜が、吹く風にハラハラと花を散らす。
 「年年歳歳花相似たり」という。が、桜にとっても、今年くらい寂しい年はなかっただろう。
 新型コロナウイルスが楽しい季節に、大きな影を落としている。都市圏では、緊急事態宣言が出された。
 しかし、近所の散歩までは規制されていない。友人を誘う。誰かと話したかったといい、手作りのマスクを持参してくれた。
 いつ収束するか分からぬ見えざる敵に不安は募る。正しい情報で、正しく恐れるべきだとか。せめて手と心を掛けた食事と十分な休養で、今を乗りきりたい。
 宮崎市 川上久子(71) 2020/5/4 毎日新聞鹿児島版掲載