夢の中で縫い物をしていた。手にしているのは、夏、くるぶしまで届く裾丈に、バッサリはさみを入れたギャザースカート。不思議なことに裾(折り曲げてまつっている)の方ではなく、脇の縫い代を絎けている。しかも、とうに10年は超したであろう絹のミシン糸で。
和裁をやめて久しい。あれほど縫うことが好きだったのに、今はもう針を持つことさえ嫌になってしまった。
けれど、夢に出てきた私は、薄い布地を手のひらに広げていとおしそうに針を動かしていた。夢は元々へんちくりんだから深く考えないことにした。
宮崎県延岡市 佐藤桂子(73) 2021.10.1 毎日新聞鹿児島版掲載