妻から「眼鏡はない?」のLINE。即、妻の行動線を追うも影も形もない。妻は戻るや否や昼食抜きの必死の捜索開始。台所、洗面所、風呂場。ベッド、電話や居間のテーブル周り。車の中、眼鏡が入り込みそうなありとあらゆる隙間。ゴミ箱、バッグまでひっくり返すも所在不明。挙句に台所の棚、引き出し、洗濯機の中まで血眼の大捜索を尻目に眼鏡は冷笑するや。ベルサイユ宮殿ならいざ知らず、ウサギ小屋のいずこに隠るるや、謎は深まるばかり。ミステリー好きの妻にもこの「眼鏡失踪事件」は難事件と見えて迷宮入りと相成った。
鹿児島県肝付町 吉井三男(79) 2021.10.16 毎日新聞鹿児島版掲載