雨上がりの裏庭、沙羅の白い花が咲いている。清楚で気品があるが少し寂しい。弟を思う。
弟は20代、夢を抱き上京、懸命に働いた。45歳で家を建てた時、どこの部屋からも見える庭の中央に沙羅を植えた。どんな思いで選んだのか私は知らない。
入居して半年、弟は病に倒れ逝ってしまった。それは2月だった。沙羅は枯れてしまっているかのように灰褐色の姿で立っていた。だが、春が来ると芽吹き、葉を茂らせ、白い花を一面につけた。弟の写真のある部屋から義妹と無言で眺めた。
あれから25年。弟の沙羅は今年も静かに咲いているだろう。
宮崎市 堀柾子(73) 2018/7/10 毎日新聞鹿児島版掲載
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