はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ボールペンと私

2013-05-19 22:39:21 | はがき随筆
 私が初めてボールペンで書かれた字に出会ったのは1945年(終戦の年)の春だった。
 「このはがきの字は水にぬれてもにじみません」。そう書かれたはがきは、中国の天津に住む叔母が、台湾にいた私たち家族に宛てたものだった。「うそでしょう」と水にぬらしてみたが、1字もにじまなかった。
 終戦後、日本に帰って5年過ぎ、私は初めてボールペンを手にする事ができた。しかし当時のインクはまだ青色だった。
 今では当たり前のように思われている物にはそれぞれに変遷がある。携帯電話、カップ麺しかり、人間もまたしかり。
  鹿児島市 高野幸祐 2013/5/15 毎日新聞鹿児島版掲載

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