こちらではユリの季節である。もうずいぶんまえのこと、奄美の徳之島に赴任していた。5月初旬、道路脇の土手、山すその草むらに野生のテッポウユリが清楚な花を咲かせていた。その香り、部屋に一輪挿して置くと家中芳香が漂うほどである。
連休の頃、帰省する空港への途中で何本か手折って機内へ持ち込んだ。たちまち機内いっぱいに馥郁とした香りが漂いはじめた。乗客に気の毒なほどである。女性乗務員たちが「なんとまー」とほほ笑んでくれた。いい気になって何本かを進呈したが、今度はどこにその香りが漂うのか気になったのだった。
鹿児島市 野崎正昭(87) 2019/7/18 毎日新聞鹿児島版掲載
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