はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆3月度

2017-04-15 09:57:04 | はがき随筆
 はがき随筆の3月度月間賞は次の皆さんでした。
 
【月間賞】21日「ドラマは続く」鳥取部京子=肝付町新富
 【佳作】17日「羽ばたき」山下秀雄=出水市西出水町
 ▽22日「おにぎりの日」堀之内泉=鹿児島市大竜町


 「ドラマは続く」は、父親の遺品の整理に悩む話です。以前とは異なり、どの家庭も不用品があふれている実情では、引き取る遺族も少なく、結局は公の焼却炉へ。悲しいし、もったいないが、生活の次のステップへ進む一過程と割り切らざるをえないようです。その割り切り方に好感をもちました。
 「羽ばたき」は、知人の退職祝いの会に招かれたときの感想です。現役のとき、異業種交流を主張されていただけに、参加者もまた異業種交流。歓談の後には、ご本人の鶴の鳴きまねの余興まで飛び出し、退職後のご活躍も想像できて。往々にして湿っぽくなる送別会が、明るい将来のある会になりました。
 「おにぎりの日」は。子供のとき、おにぎりの日があり、ご飯と具材とが並べてあるだけの料理だが、兄弟それぞれのおにぎり作りが楽しかったという内容です。今になっては、母の料理をしたくない日だったのだろうと想像できますが、子供たちには大満足のメニューでした。子供の歓声が聞こえてくるようです。
 この他に3編を紹介します。
久野茂樹さんの「3人の師」は、率直さが、読む人に快さを与えてくれます。軍人の父からは「愚直さ」を、早逝の友人からは「信じきること」を、妻からは「他人と比べず自分を生きること」を学んだ。この3人の師が与えた宝はこれからの人生の指針でもある。
 宮路量温さんの「初音」は、鶯の初鳴きのぎこちなさと、お孫さんの祖父母を呼ぶときの片言と比べて、そのもどかしさを楽しんでおいでの文章です。浅い春に、鶯の鳴き声の変化と、お孫さんの成長とを待ち遠しく感じているている時間は、おそらく幸福というものでしょう。
 脇田博さんの「ふるさと鹿屋探訪」は、柏市からの旧居再訪の文章です。終戦前後に住んでいた街も家並みもすっかり変わってしまっていたが、ギブ・ミイ・チュウインガムの世代の思い出はしっかりと残っていた。旧家の姿と旧懐の念とがこれからの生活の励みになりそうです。
  鹿児島大学名誉教授 石田忠彦 2017/4/14 毎日新聞鹿児島版掲載


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