はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

夏の忘れ物

2019-07-25 12:21:50 | はがき随筆

 ♪夏も近づく八十八夜♬ 保育園からの曲が聞こえてくる。夏休みの度に来てくれた孫たちは上級生になり、帰鹿途絶えて久しい。倉庫の片隅に孫娘と貝殻拾いで採った貝が十数個、網袋に下がっている。福ノ江海岸の岸辺で波と戯れながら拾った貝殻だ。一個一個拾う都度「きれい。何という貝」と尋ねる孫娘の声が網袋から聞こえるような気がする。

 飽きが来るまで海辺で遊ばせていたが、笠山に夕日が赤くなり「帰るよ」と呼ぶと、孫娘の麦わら帽子のリボンがシルエットとなって揺れていた。その夏が今年もまた来る。

 鹿児島県出水市 宮路量温(72) 2019/7/18 毎日新聞鹿児島版掲載


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