はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

幼き日の父の像

2016-07-28 22:01:54 | はがき随筆
 父は私と妹を、海水浴へ連れて行った。深い海は怖かったが父は泳ぎ方を導いてくれた。腹ばいの形になり両膝を伸ばし、バタ足の練習をする。山のようなしぶきがあがった。バタ足は身体が左右に揺れ動き、浮き沈む。父の肩につかまると筋肉の塊だ。偉大な背中に手で触ると岩石のごとく硬かった。
 仕事好き、子供好きの父は常に末っ子には手を差し伸べてくれた。ある日、銭湯に新しいげたを履いて行き、古いげたで帰宅した。近くに盗人がいたとか……。明治生まれの父よ、ありがとう。バタ足もオリンピックで〝日の丸〟を掲げよう。
  姶良市 堀美代子 2016/7/11 毎日新聞鹿児島版掲載

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