細かな花々が寄り集まって、毬のように膨らみ咲くアジサイ。道沿いに今、あちらこちら美しい。ここにもあったのか、と気付くこの梅雨の時期。あの人も好きであった。よく車で送り迎えをした。雨の中を傘でテクテク歩いている姿によく出くわすので、どうですか、と声をかけて乗ってもらった。同じ会社であるし、方向も同じであるから。わずか数分間のたあいない会話だったが、それがとても楽しみだった。やがて私も退職し会社もなくなってしまった。彼女も結婚して元気でいるだろうか。水滴で輝く小さな花々でふと思い出すあの日々である。
出水市 山下秀雄 2016/7/10 毎日新聞鹿児島版掲載
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