夏の海、フェリーのデッキからはるかかなたの洋上に1羽の鳥を見つけた。どこの陸地を目指しているのだろう。向かい風を受けて時に高く、時に海面スレスレに飛び続ける。鳥に自分を重ねた。「白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」。牧水の歌が脳裏をかすめたのだ。私には、20代に10年間の苦しい低空飛行の時期があり、今はその2度目のまっただ中。心の折れそうな日々が続き、ハッと我に帰っては自分を励ます。この身もいつかこの大海原の藻くずとなろうが、今一度頼もしき上昇気流を捕らえ、心安らかな飛行を果たさん。
霧島市 久野茂樹(60) 2009/9/2 毎日新聞鹿児島版掲載
霧島市 久野茂樹(60) 2009/9/2 毎日新聞鹿児島版掲載
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