はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

飛ぶ

2009-09-03 17:01:51 | はがき随筆
 夏の海、フェリーのデッキからはるかかなたの洋上に1羽の鳥を見つけた。どこの陸地を目指しているのだろう。向かい風を受けて時に高く、時に海面スレスレに飛び続ける。鳥に自分を重ねた。「白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」。牧水の歌が脳裏をかすめたのだ。私には、20代に10年間の苦しい低空飛行の時期があり、今はその2度目のまっただ中。心の折れそうな日々が続き、ハッと我に帰っては自分を励ます。この身もいつかこの大海原の藻くずとなろうが、今一度頼もしき上昇気流を捕らえ、心安らかな飛行を果たさん。
  霧島市 久野茂樹(60) 2009/9/2 毎日新聞鹿児島版掲載


最新の画像もっと見る

コメントを投稿