古稀になっても、海は少年時代のように私を魅了する。
梅雨前の大潮のとき、蕨島の磯浜へ妻と出かけた。海は広い。塩の香がプーンと漂う。さざ波がヒチャー、ポチャーと岩に語りかける。蜷を探して磯を歩けば、巻き貝たちは耳ざとい。するっ、するっと岩の下や奥に隠れる。ぽトンと、海に落ちたり、逃げるのに懸命だ。浅海の底の岩にヤドカリたちは群れて、何か会議を開いている。
沖の船は、私には47で死んだ父のイカ釣り舟に見えた。かつて、小2の私を可愛がりイカ漁の船に伴ってくれた父は、古稀の海を見ることはなかった。
出水市 小村忍 2013/6/24 毎日新聞鹿児島版掲載
梅雨前の大潮のとき、蕨島の磯浜へ妻と出かけた。海は広い。塩の香がプーンと漂う。さざ波がヒチャー、ポチャーと岩に語りかける。蜷を探して磯を歩けば、巻き貝たちは耳ざとい。するっ、するっと岩の下や奥に隠れる。ぽトンと、海に落ちたり、逃げるのに懸命だ。浅海の底の岩にヤドカリたちは群れて、何か会議を開いている。
沖の船は、私には47で死んだ父のイカ釣り舟に見えた。かつて、小2の私を可愛がりイカ漁の船に伴ってくれた父は、古稀の海を見ることはなかった。
出水市 小村忍 2013/6/24 毎日新聞鹿児島版掲載
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