はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

二つの光景

2008-06-16 16:42:04 | はがき随筆
 風に乗って勢いよく泳ぐ5匹のこいのぼりと雨に打たれビショビショのそれ。明暗を分けたこの二つの光景を見たら、自分が10歳の時の家族の姿のようで胸にグッときた。青春時代を7年間戦地で過ごした父は、42歳で不慮の事故に遭い、その後遺症で不運な生涯を終えた。苦労知らずで育った母も、父の世話と子ども3人を育てるために自分を犠牲にして苦労した。
 もうすぐ父の命日。2人は今、薫風が吹き渡り、鶯がつややかな声で鳴く墓地で安らかに眠っている。墓前に母が生前、育てめでたアマリリスを供え、魂が永遠に癒されるよう祈った。
   鹿屋市 田中京子(57) 2008/6/15 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真は南さん

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