はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

時計のいたずら

2008-06-16 17:14:10 | はがき随筆
 時報は文字盤を見て知るだけの角時計。電池を替え、時刻を調節してしばらくするとピンポーン。聞いたこともなかったのに。寝間に入ってしばらくするとピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。玄関のインターホンと全く同じで、さも急用と言わんばかりに連続で。誰が何用でと身をふるわせて玄関を見ると、人影と見え、とくとくうなる心臓を抑えて、縁側から庭の門扉を見ても動いていない。十三夜の月はこうこうと、近所もまだまだ暗闇で、電話台を探すとまたピンポーンと“半”の時報。古時計の仕業に全身の力が抜けた。
   阿久根市 川畑マスミ(77) 2008/6/16 毎日新聞鹿児島版掲載

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