はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

今生のかおり

2007-08-25 07:55:15 | はがき随筆
 廊下でかん腸がすむのを待っていた。「たくさん出ましたよ」と看護士さんがニコニコしながら、新聞紙包みを持って出てこられた。
 病室へ戻ると〝残り香〟がする。つい「臭いね」と窓を開け放った。
 そしてその夜、思いがけなく姑は逝ってしまった。
 人の手を借りないと、排せつも食事もできない身になった姑。〝残り香〟にそそくさと窓を開け放ったことが、姑を惨めにし、慌ただしく旅立たせてしまったのではないか。「これ以上、嫁たちの手を煩わせたくないと思ったのだろうよ」と夫は言うが……。
   出水市 清水昌子(54) 2007/8/24 毎日新聞鹿児島版掲載

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