人生には誰でも幾つかの忘れられないことがあるでしょう。
あれは私が小学5年生の頃。生真面目で働き者だった、七つ年上の兄さんがある日突然行方不明になったのでした。
母親に「お前は遠くの道を見とけ」と言われ、下校後、雨でかすんだ遠くを必死に見ていた記憶があります。当時田舎の我が家は遠くの方が見渡せる高台にありました。
そして兄さんは3日目の昼間、サツマイモ小屋にいて、やつれた顔に僕は心臓が止まるほどでした。理由は母の使いで印鑑をなくしたから……。お騒がせなこと。
宮崎県延岡市 前田隆男(82) 2020/10/9 毎日新聞鹿児島版掲載
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