毎年、ある日、突然夏草の茂る庭に秋を連れてくる花。
異国の香りともの悲しさが漂うのは「ジャガタラお春」の歌のせいだろうか?
「敗戦の秋、兄が夢半ば、まっさらの運動靴を枕辺に、十代で逝った。
野辺に咲き乱れる彼岸花を手向けた日を思いだして……」と切ながる人がいる。
アーチを彼岸花で埋め尽くした谷あいの高校の運動会。
真っ赤な花の根元で、大きな声で甘えた耳の聞こえぬ真っ白い猫の姿がなつかしくよみがえる。
幾つもの思い出を集めて、彼岸花がメラメラと燃えている。
鹿屋市 伊地知咲子 2011/11/17 毎日新聞鹿児島版掲載
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