はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆10月度入選

2011-11-18 22:24:20 | 受賞作品
 はがき随筆10月度入選作品が決まりました。
▽肝付町新富、鳥取部京子さん(72)の「秋を探しに」(22日)
▽同町前田、永瀬悦子さん(61)の「親指も」(7日)
▽出水市高尾野町下水流、畠中大喜さん(74)の「熟した柿の実」

──の3点です。

 今月は軽妙な味のある文章が沢山ありました。優れたものを数編紹介します。
 中種子町増田、西田光子さん(53)の「8月の思い出」(21日)は、夫婦で韓国に旅行し、映画館で言葉が分からないまま、館内の人々の笑うところで、ご主人の指示で自分たちも笑ったというおかしな内容です。
 鹿児島市魚見町、高橋誠さん(60)の「ロイド君」(7日)は、夫婦だけの生活で、「両手をついて玄関で送り迎えをしてくれる」のは、三毛猫だけだという侘びしいようなおかしいような内容で、猫の格好が彷彿と目に浮かびます。
 出水市武本、中島征士さん(66)は、中学の田植えの授業で、雨が降ると、女子学生のシャツが肌にピッタリくっつくのがまぶしかった、というのを、現在魚拓の取り方を教えていて思い出したという内容で、連想の妙ここにきわまれりという感じです。
 志布志市有明町野井倉、若宮庸成さん(72)の「千代美」(6日)は、老衰の愛猫が犬小屋で眠っているのを、愛犬が入り口で守っているという内容です。それが親子のように見えてしかたがない。
 肝付町前田、吉井三男さん(69)の「良か晩な~」(15日)は、頂き物の秋茄子の、調理法が羅列してあるだけの文章ですが、すごく豊かな晩酌付きの夕餉にみえてきます。
 次に入選作を3片紹介します。
 鳥取部京子さんの「秋を探しに」は、弟さんが姉さんの真似をして、連休は秋を探しに行った、と言ったら、みんなに笑われてしまった。同じ言葉でも、その言葉が似合わない人がいるものだという内容です。「言葉が似合わない」という表現はすばらしいですね。
 永瀬悦子さんの「親指も」は、親指を怪我して以来その不自由さに困ってしまい、母親に手助けしてもらっている。指も家族も親が有難いという内容で、肉親と手の指との対比が面白い文章にしています。
 畠中大喜さんの「熟し柿の実」は、庭に熟した柿の実がそのままの形で落ちていることがある。それを静かに拾って食べる至福の時が、読んでいる人にも感じられるような文章です。私もかつて物置の籾殻の中から熟柿を取り出した感触を思い出しました。
(鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)

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