はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

残された言葉

2018-06-08 17:43:22 | はがき随筆
 母の遺品を整理していたら父の手帳が出てきた。旅の日記だった。大阪に住んでいた頃、両親が訪ねてきた時の日記の中に「幼稚園の誕生会で孫の劇を見た」とある。娘に知らせると覚えていた。ブレーメンの音楽隊の鶏の役だった。「自分でお面を作るよう言われたの。描けなくて、お父さんに描いてもらったらリアルすぎ。自分で描いてないのバレバレだったよ」と笑う。鶏の面を泣きそうな顔で受け取った娘の顔を思い出した。
 父が日記に書き残した言葉が思い出を誘う。こうしてはがき随筆を書きながら、後に家族がこれを読む日のことを想う。
 宮崎県串間市 岩下龍吉(66) 2018/6/8 毎日新聞鹿児島版掲載

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