はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

過ぎ去りし日

2018-05-21 20:29:41 | はがき随筆


 咲き誇るツバキを眺めながら二十数年前の出来ごとを思い出す。
 剪定を楽しんでいた亡夫を手伝っていた息子が枝を切り落とした。丹精こめて作り上げた枝を。夫の驚き、落胆ぶり、きょとんとしている息子の顔、対照的だった。
 沈黙している夫の胸中を察し、どうなることやらと案じた。やがて息子に下された裁きは「すんだこっじゃ」。威厳はあるが寛大なはからいだった。今では枝の切り口も多くの葉に守られ静かに眠っている。
 今年も変わらぬ深紅の花を眺めながら、懐かしく思い出す。
  鹿児島市 竹之内美知子

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