今の車は便利だ。スライドドアはゆっくり自動で閉じてくれる。昔はパタンと占めてさっさと歩き出していた。今は確かに便利だけれど、このゆっくりがもどかしい。離れてキーボタンを押せば済む話だが、やはり閉じ切るまで待っている。手持ち無沙汰の数秒間、最近こうしてみた。それは空を見上げること。背筋を伸ばして天を仰ぐことだ。久しくしていなかった。時にぽっかり浮かぶ雲。それを切り裂き飛ぶツバメ。時にはさそり座、アンタレス。毎日、毎回違う天空。結局しばらく眺めている。なぜそんなに急ぐのだ? と今日は入道雲が笑っていた。
出水市 山下秀雄(52) 2021/7/3 毎日新聞鹿児島版掲載
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