はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

祖母の悲しみ

2012-08-01 19:25:00 | はがき随筆
 父の戦死の公報が入った時に気丈な祖母(父の母)は「バンザイ」と叫び、お祝いだと言って飼っていた赤鶏をつぶして村の人たちにごちそうしたという。威厳のある祖母だったが、その時77歳ぐらいだったか。私は4歳。母屋に一人で暮らしていて、離れにはやはり戦争で夫を亡くした伯母たちが住んでいた。祖母は私たち母子が墓参りに行くのを心待ちにしていた。
 晩年90歳を過ぎた祖母は、認知症となり「勇一どんはどこへ行ったどかい。戻っこんが」と父を探し回っていた。本当はどんなに頼りにしていたか。祖母の涙顔が忘れられない。
  霧島市 秋峯いくよ 2012/7/31 毎日新聞鹿児島版掲載

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