はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

竹が鳴く

2017-04-08 11:27:40 | はがき随筆


 生まれ育った忘れがたき故郷、大隅の村に帰った。昔と変わらぬ山や川、かつて五十数軒にぎわった集落に人の姿はなく、生活の音はきこえない。冬の昼下がり、思い出の道を散策する。無人の家がそこかしこ。鶏や牛馬の鳴き声を子守歌に、一つの布団に兄弟で寝た子供の頃。家族総出の田植え、芋取り、村祭り、豊作相撲の歓声。先人たちが残した風光明媚な棚田。日本の原風景だった村が消えていく。皆どこに行ってしまったのか。時折吹く風に山のかなたから竹の鳴く音がきこえてくる。目をとじると竹の泣く音に聞こえてならない。
  指宿市 有村好一 2017/4/6 毎日新聞鹿児島版掲載

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