亡き父の旧知の人が、軽トラックで私の家に来た。荷台に鉢植えの植物が乗っている。白い根は鉢に巻き付いていた。知人は「育ててくれないか」と持参した。お茶を勧める妻が「カトレアだ」と言うと知人は相づちをうち、しわ顔が笑った。
頂戴したが、いつも育てるのは妻になる。枯らしたら大変と工夫して管理している頃、しばらくして知人は永眠された。それから3年後の今年、妻の努力のかいあって見事な大輪の花が5輪も咲いた。赤紫のあでやかな容姿は、洋ランの女王の名にふさわしい。知人と共に開花をめでたかった。
鹿児島県出水市 宮路量温(71) 2018/6/28 毎日新聞鹿児島版掲載
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