はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

今日も生きる

2010-08-08 22:11:35 | はがき随筆
 暑さで、へばりそうになる老体を抱えて過ごす日々。
 幼い日、父の田舎の川でおぼれかけた。川底の光る小石を拾おうと手を伸ばした途端に、ボコボコと沈んでいった。父が近くにいて助かった。
 ちょうどそのころ、友達の雪子ちゃんが病気で死んだ。おはちゃんが「雪子という名前だから暑さでとけたのだろうね。弘子ちゃんはおぼれずにほんとうに良かった。符の良か子だね」と話したのを思い出す。
 目が、腕が不自由になった今も私は生きている。弱々しながら、しぶとい。すっかり意地悪ばあさんにもなった。
  鹿児島市 馬渡浩子(62) 2010/8/7 毎日新聞鹿児島版掲載

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