死後のことはよく分からない……けど十数年前、突然耳の奥に忘れ物をしていることを叱る父の声がした。確かめると大切な書類がなかった。
あれから時が過ぎ、父の年に近づき、老人の年齢になり。天気に恵まれ畑仕事をしている時に、畝に鍬を打ち下ろした瞬間、ふとそこに父のいる気配がして、顔を上げるといつもと変わらない風景だったが、同時に懐かしい父の満足げな笑顔が脳裏によみがえった。
気のせいだと思うが、案外、彼方は此方からそんなに遠い所じゃないみたいだ。
鹿児島県湧水町 近藤安則(66) 2020/7/25 毎日新聞鹿児島版掲載
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