母が大腿部骨折で入院、手術した。不自由になった足と、認知症を患う母に、家族は心配この上ない。一人、ベッドで過ごす姿を思い、見舞うことのできないご時世が恨めしい。
数日後、着替えを届けた玄関先で、待つように言われた。奥から車イスに乗せられた母が出てきた。無表情の顔で花籠を抱えている。今日、100歳の誕生日を迎えた母に、病院側の計らいで面会が実現したのだ。「母さん、よかったね」。手を握ると、黙って握り返してきた。
わずか数分間の面会だったが、サプライズに感激し、車イスの後ろ姿を見送った。
宮崎県延岡市 川並ハツ子(76) 2021.7.16 毎日新聞鹿児島版掲載漢字
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