はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆8月度

2018-09-15 17:41:11 | はがき随筆
月間賞に窪田さん(宮崎)
佳作は柏木さん(宮崎)
久野さん(鹿児島)
増永さん(熊本)


はがき随筆の8月度月間賞受賞者は次の皆さんでした。(敬称略)
【月間賞】16日「特攻飛行機の思い出」窪田恵子=宮崎県延岡市
【佳作】6日「肥薩線真幸駅」柏木正樹=宮崎市
▽29日「幸福感」久野茂樹=鹿児島県霧島市
▽21日=「翁長知事を悼んで」=増永陽=熊本市中央区

 「特攻飛行機の思い出」は、一編の小説を読むような、象徴的な余韻とを感じさせます。特別攻撃隊に編入された子息の出撃を畑から見送りたいと、一人暮らしのご婦人が言ってこられた。やがて出撃のとき筆者の家族と共に旗を振って見送られた情景、その後の空襲、そして連絡のとれないその方、どの一こまをとっても戦争の悲劇以外の何物でもありません。私たちを襲う人生の不条理さについて考えさせられる文章です。
 「肥薩線真幸駅」は、日常生活の中のちょっとした出来事にも、幸福感をもてる楽しみが書かれています。知人に誘われて、JR肥薩線28駅の中で唯一宮崎県にある「真幸駅」に行ってみた。驚いたことに、その駅名は自分の名の「正樹」と音読みが一緒だった。それに「幸せの鐘」まで備えてあったので、少しの幸せを願って、鐘を二つ鳴らして帰ってきた。人々の喜怒哀楽のこもった「古い駅舎」が無くならないといいですね。
 「幸福感」は、病院で見かけた心温まる光景が描かれています。介護施設のヘルパーさんに車椅子で連れてこられた老女が、ヘルパーさんのエプロンに、「幼女が、母親に甘えるように」頭を預け、それを許す「清楚な女性」との穏やかな光景。昨今、被介護者の介護者へのハラスメントが報道されていますが、「心に満ちてくる幸福感」に包まれた筆者の気持ちに同感できます。
 「翁長知事を悼んで」は、翁長前沖縄県知事への追悼の文章であるとともに、沖縄の状況へのどうしようもない怒りが籠められています。沖縄の抱えている不条理と不平等に対して、前知事は、その解決に向けて命を賭して戦った政治家として、歴史に名を残すだろうとう評価です。たしかに閉塞化している今の社会に、ある種の風穴を開けるのではないかという期待をもたせる存在でした。
 この他、日高達男さん「健気に振り子時計」、竹之内美知子さん「花束との出会い」が、記憶に残りました。
 鹿児島大学名誉教授 石田忠彦


最新の画像もっと見る

コメントを投稿