夫が「お母さん電話」と、私に手渡した。同年の友の娘さんからだった。「母が亡くなりました」。耳を疑った。電話しようと思った矢先だった。先だってはせき込みもなく、「心配していると思った。でも、ご飯も食べられるようになったよ」と元気な声だったのに……。
あふれ出る涙の中で聞き返している私を見て、夫も悟った。
3年前、彼女と私たち夫婦の3人で鹿児島へ一泊旅行。五十年来の友との初の旅だった。取り留めない話に花が咲いた。
「来年も行こうね」と言っていた矢先、コロナ禍に。一回きりの忘れられない旅となった。
宮崎県串間市 安山らく(70) 2022.1.12 毎日新聞鹿児島版掲載
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