シルバーカーを頼みとする私はいくつかの用件を終え、疲れて日暮れの歩道を右にまがると狭い路側帯に出た。前方に子供の人影が見えた。軒下に身を寄せ、まがった腰を預けて男の子が通り過ぎるのを待つ。すると、その子が私の肩に手を掛け、顔をのぞき込むようにして「大丈夫ですか。大丈夫ですか」といたわってくれる。思いがけないことに私は慌てて「大丈夫よ。大丈夫よ」と繰り返しつつ「ありがとう。あなたも気をつけてね」とゆっくり歩き出す。しばらくして振り返ると曲がり角に消えようとしていた。あの子の身の上に幸多かれと祈る。
熊本県荒尾市 平田清子(93) 2022.1.11 毎日新聞鹿児島版掲載
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます