はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆3月度

2020-04-11 18:29:05 | はがき随筆
月間賞に福﨑さん(鹿児島)
佳作は相場さん(熊本)、馬渡さん(鹿児島)杉田さん(宮崎)

 はがき随筆3月度の受賞者は次の皆さんでした。
【月間賞】29日「相合い傘」福﨑康代=鹿児島県姶良市
【佳作】8日「もう一人の私」相場和子=熊本県八代市
▽17日「虫つき野菜」馬渡浩子=鹿児島市
▽28日「夕暮れの良寛さん」杉田茂延=宮崎市

 新型コロナウイルス感染症の蔓延はとどまるところをしらず、今や地球全体に深刻な影響を与えています。はがき随筆にもこれに関連するものが少なからず掲載されました。一方で、その重苦しい暗雲を吹き払うまではないにしても、雲間からさっと光を投げかけたような作品も多く、読者の心をなごませたことでしょう。
 福﨑さんの「相合い傘」は、読み手がつい艶めかしい想像をしてしまう題です。傘の中は2人の小学生の男の子のはしゃぐ声、そして20代のこれも男性2人の楽し気な声。最後に、「私」の心の中の一人笑いに誘われて、読者もクスッ。構成の妙に加え、的確な観察をリズム感のある文体に乗せて秀逸です。
 相場さんは、誰もが持っているもう一人の私をユーモラスに造形しました。「私」のほうも言われっぱなしでなく、反撃を試みているのも面白い。考えてみれば、そのことを書いている3人目の「私」もいるわけで、文章に著すという営みの奥深さに気づせかせてくれる一遍でした。
 馬渡さんは夫が作る無農薬夏野菜についている虫と、それに無頓着な夫へのいらだちぶりを活写しています。夫婦げんかの種ですが、これがなくなると味気ないことななってしまうという気持ちと、夫の体調への気づかいがにじみ出ています。
 杉田さんが取り上げたのは、新型コロナウイルスのため休校が続いているお孫さんを散歩に連れ出した時に目にしたできごとです。遊び足りない小学生たちを見守る老人を、子どもらと夢中であそんだという逸話のある良寛に見立てました。もちろん、ご自身も良寛さんの一人です。
そのほか印象に残ったもののお名前と題名だけを。的場豊子さん「モ、チット」、渡邊布威「私もアナログ人間」、
この3月度から選者を務めることになりました。新聞を開く楽しみが一つ増えてうれしいことです。
熊本大名誉教授 森正人










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