マスクが届いた。姉が丁寧に縫った布マスク。シャツを裁ったダンガリー生地、優しい肌触りのガーゼ。ブラウス地はやわらかい。色柄も多彩でピンクのうさぎ、お握りとタコウインナー柄は和み系。リバティプリントの青は端正で爽やかだ。型を決めて裁断し、ひと針ひと針縫っていく姉の手先、おそらくあの大きな食卓に長い時間座っていたのだろう。その椅子の淡い茶色の木質が目に浮かぶ。首都圏のコロナ緊迫は私の想像を超えている。払えぬ不安を鎮めるためにやっているのよと姉は言うけれど、静かに人を思いながら運ぶひと針は美しく尊い。
熊本県八代市 廣野香代子(54) 2020/5/13 毎日新聞鹿児島版掲載
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