はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ひっかかった骨

2016-01-06 12:28:41 | はがき随筆
 まだ若く、世渡りももっと下手だった頃。大学の先輩が隣町のキャンプ場に来るというので、母が作ったスイカを届ける約束をした。しかし、父に「男性に会うために仕事を休むとはけしからん」と叱られた。
 当日、職場とは反対方向の列車に乗れば、たとい手ぶらでもおわびが言えたのに。弱虫娘は普段通りに仕事に行った。携帯電話も無い時代、謝罪の葉書を出したが、以来音信不通に。
 過日、41年ぶりに再会し「のどに骨が刺さったようで」とわびたら「スイカに骨はないよ」と笑ってくれた。あのときの骨が抜けたと思える瞬間だった。
  鹿児島市 本山るみ子 2016/1/4 毎日新聞鹿児島版掲載

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2 コメント

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余生は後悔で埋まるのか (広島県 田丸)
2016-01-13 15:57:50
 退職してもうすぐ丸八年経ちます。最近は、よく昔のことを思い出します。その多くは、懺悔に値するようなことばかりです。楽しかったなあというようなことは殆どありません。

 数年前福岡で寮の同窓会が開かれ、同階生と四十数年ぶりに会うことが出来ました。彼とは四年間同じ釜の飯を食った仲です。就職試験も一緒に受けたのですが、私は、帰郷のための旅費が欲しくて受けたのでした。その旨を話すと、彼は「あれはあれでよかった。」と言いました。

 「のどの骨が取れた」のとは違いますが、一つ許されたなと思いました。
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Unknown (Unknown)
2016-01-13 16:00:26
 退職してもうすぐ丸八年経ちます。最近は、よく昔のことを思い出します。その多くは、懺悔に値するようなことばかりです。楽しかったなあというようなことは殆どありません。

 数年前福岡で寮の同窓会が開かれ、同階生と四十数年ぶりに会うことが出来ました。彼とは四年間同じ釜の飯を食った仲です。就職試験も一緒に受けたのですが、私は、帰郷のための旅費が欲しくて受けたのでした。その旨を話すと、彼は「あれはあれでよかった。」と言いました。

 「のどの骨が取れた」のとは違いますが、一つ許されたなと思いました。
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