はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

竹の秋

2018-05-21 23:33:29 | はがき随筆


 この地に越してきた32年前、自然が色濃く残っていた。息子は屋までクワガタを捕り、小川でメダカやエビをすくってきた。
 お気に入りの竹林があり、新緑のトンネルに、古い葉が吹雪のように舞い散るのを見た。秋と春の同時の営みの美しさ。 
 10年後、団地の拡張が始まり、山が幾つも崩され、沼のような田もその竹林も消えた。
 その時、造成地で50㌢ほどの地下茎を拾い、庭に植えた。忘れた頃、か細い筍が2本芽吹く。
 あれから20年、10本の竹となり、教えもせぬのに春、葉を落とす。朝、若葉の先に涙をため、ちちはは恋し、と竹が泣く。
  宮崎市 柏木正樹  2018/5/17  毎日新聞鹿児島版掲載

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