はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

長過ぎた忘れ物

2009-10-04 23:16:11 | はがき随筆
 幼少のころ、熊本の田舎で場所は山川のほとりに柿の木が1本あった。田のあぜで小学2年生の兄は青柿を2個ちぎり青田に埋め込んだ。青田の水のぬくもりで2、3日放置すれば渋が抜けて食べられると言って約束した。かれこれ忘れ去って70年ばかりたってしまった。年老いて、懐かしさも手伝って、埋めていた柿を見に行った。70年ばかりたって、川は相変わらず瀬の音を立て続けている。当時の田のあぜが、既に草茂る荒れ地になって田んぼもなし、柿の木もなし。あるのは八十近くになった老いぼれと記憶だけだ。なつかしきかな。
  鹿屋市 山口弘(77)2009/10/4 毎日新聞鹿児島版掲載

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