幼少のころ、熊本の田舎で場所は山川のほとりに柿の木が1本あった。田のあぜで小学2年生の兄は青柿を2個ちぎり青田に埋め込んだ。青田の水のぬくもりで2、3日放置すれば渋が抜けて食べられると言って約束した。かれこれ忘れ去って70年ばかりたってしまった。年老いて、懐かしさも手伝って、埋めていた柿を見に行った。70年ばかりたって、川は相変わらず瀬の音を立て続けている。当時の田のあぜが、既に草茂る荒れ地になって田んぼもなし、柿の木もなし。あるのは八十近くになった老いぼれと記憶だけだ。なつかしきかな。
鹿屋市 山口弘(77)2009/10/4 毎日新聞鹿児島版掲載
鹿屋市 山口弘(77)2009/10/4 毎日新聞鹿児島版掲載
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます