七輪に網を置き半分に切ったサンマを並べる。脂が滴り始めると燃え上がり渋うちわで消す。熱々にしょうゆをかけ口に運ぶ。子供の頃の光景で、味を楽しむというより栄養源である。今はロースターで炎も煙も出ない。かすかな音と匂いが七輪の時を思い出させる。すでに大根おろしが添えられた皿には櫛形に切ったカボスも。目の前に置かれるのももどかしく箸はまずはらわたにいく。その苦みと酸味、辛みが口いっぱいに広がるのを楽しむ。子供の味覚では知ることのできない大人の味が醸し出される。酒は熱かん。そして被災地の秋を思うのである。
志布志市 若宮庸成 2012/10/8 毎日新聞鹿児島版掲載
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