はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

極楽の余り風

2014-10-05 04:55:47 | はがき随筆


 毎日数回、境内にある手水鉢に早朝から来て、ジージーとさえずりながら水浴びをするヤマガラは、いかにも涼しげだ。
 夏の昼下がり、うだる暑さをかきたてるアブラゼミの鳴き声は遠くなり、夕方には虫たちの声がにぎやかになってきた。
 この季節になると、「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」と口ずさんでしまう。気温35度以上の猛暑日が続いた今夏も、いつの間にか秋の気配を肌で感じるようになった。ああ! この風を「極楽の余り風」というのかな。生かされている老夫婦に至福の一時を味わわせてくれる。
  志布志市 一木法明 2014/10/4 毎日新聞鹿児島版掲載

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