はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

泥のスパイク

2020-09-06 09:45:32 | はがき随筆
 泥のスパイクはけなげな思い出が詰まっている。家の下駄箱で、泥と汗の混ざった鼻をつくような匂い。亡夫は高校時代、野球選手にあこがれた。勉学よりも好きな野球に青春を謳歌した。汗と泥と涙と魂の結晶。バットで尻をたたかれ、厳しい試練の日々の積み重ねがうかがえる。泥のスパイクは何にもかえられない。底の金具もせんべいのごとくすり減り、つま先もつぶれた。ひもはクモの巣の糸状に伸びきった。苦しい時はスパイクさんに味方してもらった。長年ご苦労さま。心より感謝。大空に羽ばたく少年は実業団への野球の未来を歩んだ。
 鹿児島県姶良市 堀美代子(75) 2020/9/6 毎日新聞鹿児島版掲載

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