小学6年生の頃、どういうわけか、傾いた家に住んでいた。2階が私の部屋だった。家賃が安かったのか、玉を転がすとコロコロ転がる。家の前に料理屋があった。夕方になると、鰻の蒲焼の匂いがしていた。家の裏には川が流れ、向こう岸に料理屋の屋形船がつないであった。川の水は水前寺公園から江津湖に流れる冷たい水だった。よくホタルがとんでいた。屋形船に腰掛け足を水につけ、友達のバタバタやる。おしゃべりも続く。日が暮れて屋形船に赤い提灯がついて、お客を乗せ江津湖にこぎ出す。本当に絵のようだった。昨日のように思い出す。
熊本県八代市 相場和子(95) 2022.9.3 毎日新聞鹿児島版掲載
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