はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

お目目拭いて

2012-08-13 15:58:45 | はがき随筆
 投稿歌集を読んでいて、次の短歌を一読するや、私はどうにも形容しがたい気持に襲われ、歌集を閉じた。
 <死に近く視力薄れし子が言えり「お母さんの顔が見えない、お目目を拭いて」>
 私は小心者である。小児病棟に小児がん、3歳ほどの男の子、若いお母さん……。それらのものが一気にあふれ、いたたまれなく、やるせない。14年前の投稿歌である。男の子はもうこの世にいないだろうか。そして男の子のお母さんは、どんなふうに今を生きているであろうか……。何もできない。ただただ私は無力感にどっぷりつかる。
  霧島市 久野茂樹 2012/8/12 毎日新聞鹿児島版掲載

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