はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

沖縄で見たもの

2010-06-08 11:06:20 | はがき随筆
 基地問題で揺れる沖縄を数年前に仲間と旅した。地元の教師に案内を頼んだ。集団自決のあった洞(がま)へ行った時のこと。平和像に拝礼して帰ろうとした際、「ここを見て」とガイドは横の戸を開けた。中は全員がやっと入れる広間になっていた。懐中電灯に照らされた一角を見て、私は思わず息を呑んだ。六十数年の時を越えた遺骨、茶碗、皿、櫛、鏡などのかけらが散乱していた。これが沖縄なのだと私は思った。外に出て生温い風の中、自然と涙が流れた。
 私は思う。戦場となった沖縄を軽率に語ってはならないと。
  山室恒人(63)大口市 2010/6/6 毎日新聞鹿児島版掲載

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