小学生の頃、下校中に上級生たちに会った。よい所へ行こうと誘われて果樹園に入った。水蜜桃がよく熟れている。突然、人家から「こらっ」と声がした。先頭の数人は桃をもいで逃げ出した。最後尾の私は何もわからなくなり、後を追った。
母は翌日、その家の人に「悪童たちが果樹園に入り、おたくの息子さんもいた」と知らされた。「僕は盗っていない」と答えると祖母にこっぴどく叱られた。「李下に冠を正さずという、人さまから怪しまれるようなことはするな」と。彼らはスイカ盗りにも行ったが、ドジな私にもう声は掛からなかった。
鹿児島市 田中健一郎(82) 2020/7/3 毎日新聞鹿児島版掲載
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